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こんな症状がある時は

「頭がいたい」「顔面がいたい」「もの忘れが最近多い」などなど普段体のことで気になることがありませんか?
「頭がわかれば体がわかる」と言われる程、脳は大切です。気になる症状がある方は当院にお越し下さい。

【60歳以上の頭部をぶつけた方へ】

「転んで頭をぶつけた。」「大きなたんこぶが出来た。」なんて話をよく耳にしますね。
同じ様に頭をぶつけた場合でも、年齢層によって、注意しなければならない期間が異なります。
特に、60歳以上の方は、忘れた頃に症状が出てくることもありますので、よく注意してください。

慢性硬膜下血腫と言う病気をご存知でしょうか?

慢性硬膜下血腫は、頭を打撲してから、3〜4週間かけてゆっくりと脳の表面に血液がたまってくる病気です。頭部打撲の程度も、決して強いものではありません。御来院した時には、頭をぶつけたことすら忘れている方もいらっしゃいます。

症状は、非常にゆっくり進行します。中には、「最近、おじいさんのぼけが急に進んだんです。」と言われて来院される方もいらっしゃいます。

典型的な症状としては、最初は軽い頭痛を訴えます。特に、「少し頭を振ると痛い。」と言われます。その後、徐々に、行動が鈍くなったり、物忘れをする様になります。さらに、数週間たつと、半身の麻痺が出てきて、会話が成立しなくなってきます。しかし、結構日常生活は出来ている方も多く、ぼけ、つまり、痴呆が進んだなーと言う感じで捉えられているケースもあるようです。私が経験した、非常に典型的なケースを供覧いたします。

患者さんは、76歳の男性です。3世代家族で、昼間は、お孫さんの面倒をよく見ていらっしゃいました。夜の晩酌で、焼酎を飲むことを欠かさない方でした。御来院される約2ヶ月前に、夜に、お布団の上で、4歳のお孫さんとお相撲を取っていました。お孫さんを楽しませるために、お孫さんに投げられる振りをして、お布団の上に、大げさに転倒して、柱に軽く頭をぶつけられました。意識を失うことも無く、ごくわずかなたんこぶが出来た程度でしたので、気にすることも無く、放置していました。

その4週間後位から、立ち上がったりする時に少し頭痛を自覚していたようですが、強い痛みではなく、そのうち訴えなくなりました。同じ頃から、食事中に、こぼすことが多く見受けられる様になったり、スリッパを履いていると、右のスリッパだけが脱げてしまうことがあり、歩く姿を見ていると、右足を少し引きずる様になったそうです。しかし、日常の生活にあまり不便を感じていませんでした。 さらに2週間ほどしてから、物忘れがひどくなり、時々、おしっこの失敗をする様になります。

家族は、ぼけたのかと思っていましたが、結構意識はしっかりしていて、「病院に行こう。」と言うと、強く拒否しましたので、様子を見ていたそうです。ある朝、朝食に起きてこないため、家人が部屋いくと、右半身に麻痺があり、歩行できなくなっていたために、救急車で来院されました。

来院時には、頭をぶつけた記憶は、本人も、家族もありませんでした。頭部CTを施行したところ、大きな慢性硬膜下血腫を認め、同日、約30分程度の手術(局所麻酔です。)を行いました。

翌日には、症状は、完全に改善し、すたすたと、病院内を闊歩されていました。病室に行く度に、4歳のお孫さんが、おじいさんにくっついていたのを覚えています。 5日後には御退院され、しばらくして、お孫さんと相撲をとっているお写真をお送りいただきました。主治医としては、もう少し大人しくしていただきたかったのですが・・・?

この様に、短い簡単な手術で、非常に良くなる病気ですが、痴呆と間違われたまま、放置されてしまうケースもあるようです。60歳以上の方で、頭をぶつけられた方は、とりあえず、脳神経外科の御受診をお薦めいたします。

【物忘れと痴呆・脳神経外科医のできること】

『さっき何かしようと思ったんだけど、なんだっけ?』『お財布どこにおいたっけ?』『家の鍵かけたかしら?』なんてことがありませんか?こういう状態は、認知症の始まりなのでしょうか?認知症とは、一度正常に発達した知的機能が、後天的な脳の器質障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来す状態です。上にあげたようなケースが、全て認知症ならば、40歳以上の人は、ほとんど認知症の診断になってしまいます。

まず、認知症は何かを知ることが大切です。なるべくわかりやすく説明を進めていき、脳神経外科医が関与できることを、お知らせしていきたいと思います。まず、認知症の診断には何が必要なのでしょうか?

(1)記憶障害
(2)実行機能障害、失行、失認、失語などの記憶障害以外の認知機能障害が少なくとも一つ以上あること
(3)認知障害が病前の機能水準から著しく低下すること

この三項目が必須条件です。言葉遊びのようですが、こんなおかたい文章を読んでみても、全く実態がつかめません。まるで、役所においてある説明文のようです。詳しいようで、全く実態がつかめません。実用性のある、くだけた表現で、認知症に関して説明していきます。

最近は、お一人暮らしの御高齢の方が増え、国は苦肉の策として介護保険を導入しました。単に、少子高齢化のために、保健医療制度が崩壊しかかったために、病院機構では対応できなくなったのです。そこで、在宅でなんとかしてもらおうとして始めた制度が介護保険です。しかし、その制度も、高齢化のスピードに追いつけずに破綻しかかっています。皆様、ご存知ですよね。

数年前に抗痴呆薬が厚生労働省に認可され、同じ頃に、認知症の早期診断が推進される様になりました。軽度の記憶障害(良性老人性健忘と言います。)や、健常高齢者に認められる記憶機能の低下(AAMI:age associated memory impairment)と、本当の認知症の鑑別が必要なのです。こういう鑑別は、一部の心療内科医や神経内科の医師に依存していましたが、医師の絶対的不足のために、多くの痴呆は放置状態と言って良いかもしれません。そのため、不安を抱えていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。
まず、正解な知識を持つことをお薦めいたします。一部、専門的で難解な部分もありますので、わかりにくい部分は、とばして読んでいただいてかまいません。

老年期に認知症を来す疾患を表1に、認知症の診断基準(DSM‐IV)を表2に、認知症をきたす可能性のある薬剤を表3にまとめてみました。これらが、最も難解な部分です。ですから、表は見なくてかまいません。

こんな難しい表ではわかりにくいですよね。ですから、ある程度の、検査をして、治療の必要のある物忘れか、年のせいで少し物覚えが悪くなっているだけなのかを、調べる必要があるのです。

「物忘れ」とは、病的な物忘れを起こす病気の診断と、その重症度の判定、病状に応じた薬物療法と心理社会療法、さらには、認知症に伴う行動異常や精神症状の程度や家庭内介護力に応じての施設紹介機能、介護相談や介護保険利用法、医療費や公的援助の受け方といった医療福祉相談を含めた患者と家族をセットにしたケアーを必要とするものです。

この状態を診断するのに必要とされるものは、臨床心理試験を行える用意と、コメディカルスタッフとのチーム医療に加え、頭部MRIさらに言えば、SPECTによる画像検査が必要であり、医療福祉相談部門の充実も大切です。患者の経過や予後に応じて対応できる、デイケア施設やグループホーム、老人性痴呆疾患治療病棟もしくは療養病棟を持つ病院との連携も大切です。

診断→薬物治療、心理社会療法(リハビリテーション)→介護→社会保障がセットで行われなければいけないのです。

物忘れ外来を施行するにあたっての最優先課題は、認知症の早期発見と、早期治療です。そして、次に重要なことは、認知症治療のスキルアップであり、医療介護を統合することで、疾患の進行を防止して、患者さんの生活の質(これをQOLと言います)を高めることなのです。

さて、ここで、脳神経外科医がどう関わるのかを説明いたします。表1を見て下さい。(見るだけです。読まなくていいです。)

赤文字で示されている病気は、脳神経外科で扱う病気、もしくは、患者さんからのお話を聞いてわかる状態です。神経内科や心療内科の医師が、直接に認知症に入るのに対して、外科医は、否定する所から、診断にたどり着いていくのです。しかも、否定される病気は、手術で治療可能な疾患が含まれていますので、とても有用なのです。さらに、絞り込まれた疾患に対して、画像診断や、神経心理検査によって、真の認知症かどうかを絞り込んでいくという手法をとっていきます。当然、最後の判断に悩む場合は、神経内科や心療内科の医師への紹介を行っていきます。

では、脳神経外科における物忘れ外来の実際はどう進めるのでしょうか?
第1回目の外来:問診では、本人からの訴えと同時に、家族からの情報がとても重要です。情報の補助手段として、長谷川式簡易式記名力検査、さらに時計テストを行います。血液検査とMRI,MRAを施行させていただきます。

第2回目の外来:血液検査、画像検査、臨床心理検査の結果をお話し、確定診断の付いた患者さんに関しては、薬物投与と、脳のリハビリテーション(社会心理療法)に関しての必要性を説明します。さらに、医療コーディネーターより介護保険によるサービスや医療保険による、物忘れ専門デイケア(重度認知症デイケア)のお話をして、家族より、在宅か、施設ケアかの希望を聞き、外来診療につなげて行きます。

認知症に対する薬物治療は、日本で唯一認められている、塩酸ドネペジル(アリセプト)に限られます。副作用としては、時として、気分の高揚や興奮、攻撃性を高める作用がありますので、その場合は休薬して、塩酸チアプリド(グラマリール)や、リスペリドン(リスパダール)のような鎮静作用のある向精神薬に切り替える必要があります。不眠に対しては、転倒のリスクや離脱に伴う有害現象が生じるため、慎重に投与する必要があります。抗うつ剤を選択する方が、有効なことが多々あるようです。

こういう形で、診察→診断→治療→福祉・介護とつなげることで、患者さん本人、そして、ご家族の負担を減らすことができるのではないかと考えます。あくまでも、進行性の疾患なので、完全に、治癒させることは不可能です。治療をしても、徐々に進行していくことは避けられません。しかし、進行を遅らせ、将来の方向性を知ることで、本人だけでなく、ご家族に、心の準備をする時間を作ることができると思います。御心配な方は、脳神経外科に受診してみて下さい。

表1 老年期に認知症をきたす疾患

1.アルツハイマー型痴呆 広義のアルツハイマー病
2.上記以外の変性神経疾患 ピック病、進行性核上性麻痺、パーキンソン病、びまん性レビー小体病、ハンチントン舞踏病など
3.感染性疾患 クロイッツフェルトヤコブ病、脳炎、髄膜炎など
4.脳血管性痴呆  
5.脳神経外科的治療可能な認知症 慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍
6.内科疾患に伴う認知症 肝性脳症、腎性脳症、甲状腺疾患、ビタミン欠乏症、低酸素脳症、低血糖症
7.薬物の副作用による認知症  

表2 認知症の診断基準
(アメリカ精神医学会:DSM‐IV精神疾患の分類と診断の手引き、医学書院、1995)

アルツハイマー型痴呆

A.多彩な認知欠損の発現で、それは以下の両方により明らかにされる。
(1) 記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)
(2) 以下の認知障害のひとつ(またはそれ以上)
(a) 失語(言語障害)
(b) 失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、行動を遂行する能力の障害)
(c) 失認(感覚機能がそこなわれていないにもかかわらず、対象を認識または同定できない)
(d) 実行機能(すなわち、計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
B.基準A1およびA2の認知欠損は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障
害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す。
C.経過は、ゆるやかな発症と、持続的な認知の低下により特徴つけられる。
D.基準A1およびA2の認知欠損は、以下のいずれによるものではない。
(1)記憶や認知に進行性の欠損を引き起こす他の中枢神経系疾患(例:脳血管疾患、
パーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍など)
(2)痴呆を引き起こすことが知られている全身疾患(例:甲状腺機能低下症、ビタミン
B12欠乏症または葉酸欠乏症、ニコチン酸欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染)
(3)物質誘発性の疾患
E.その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。
F.その障害は他の第1軸の疾患(例:大うつ病性障害、統合失調病)ではうまく説明されない。

血管性痴呆

A.多彩な認知欠損の発現で、それは以下の両方により明らかにされる。
(1)記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)
(2)以下の認知障害のひとつ(またはそれ以上)
  (a)失語(言語障害)
  (b)失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、行動を遂行する能力の障害)
  (c)失認(感覚機能がそこなわれていないにもかかわらず、対象を認識または同定できない)
  (d)実行機能(すなわち、計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
B.基準A1およびA2の認知欠損は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能 水準からの著しい低下を示す。
C.局在性神経微候や症状(例:深部腱反射亢進、進展性足底反射、偽性球麻痺、歩行異常、1肢筋力低下)、または臨床検査の証拠がその障害に病的関連を有すると判断される脳血管性疾患(皮質や皮質下白質を含む多発梗塞)を示す。
D.その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。

表3 認知症をきたす可能性のある薬剤

抗てんかん薬 フェノバルビタール
抗パーキンソン病薬 アマンタジン、L-ドーパ、抗コリン剤、 ドーパミン作動薬
向精神薬、抗うつ剤、睡眠薬系  
消化性潰瘍治療薬 シメチジンなど
抗悪性腫瘍薬 メトトレキサート、カルモフールなど
ステロイド、鎮痛薬、ジギタリス製剤、抗結核薬、β遮断薬、経口糖尿病薬、インスリンなど  

【現代人の頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)】

はじめに

「頭が痛い」と感じたことの無い方はあまりいらっしゃらないと思います。しかし、頭痛を訴えて病院に行っても、ごく一般的な痛み止めだけが出され、真剣に取り組んでいただけないことが多いようです。

頭痛の原因となる明らかなもの(出血や、腫瘍)が認められず、繰り返し頭が痛くなる状態を、『慢性一時性頭痛』と言います。この中には、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛などがあります。これまでは、こういった分類はあまりかえりみられることが無く、一連の頭痛症候群として見られてきました。1990年代に、トリプタン系薬剤と言う、片頭痛によく効く薬が開発されてから、これらの頭痛症候群は、治療可能な疾患であるという認識が高まってきました。 『慢性一時性頭痛』の代表例である、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛について、ご説明いたします。

いずれの疾患に関しても、治療の第1段階は、怖い原因(出血や、腫瘍)を否定して、きちんと、『慢性一時性頭痛』と診断をつけ、その頭痛の分類をすることですので、脳神経外科への受診をお薦めいたします。

片頭痛

まず、片頭痛です。片頭痛には、頭痛がおこる前に〈前兆を伴うタイプ〉と、〈前兆を伴わないタイプ〉があります。この前兆には、何種類かありますが、目の前がちかちかするとか、眩しいと言った目に関する症状が多いようです。(これを、閃輝暗点といいます) 頭痛は、片側の拍動性の頭痛が典型的です。「脈打つような痛み」「頭の中に心臓があるような感じ」などと言われます。(中には、両側性のものもありますし、時間が経って、痛みがひどくなると拍動性でなくなってきます)痛みは、4〜72時間続きます。痛みの程度は強く、寝込んでしまったりして、日常生活に支障を来すことが多いようです。吐気、嘔吐を伴うことが多く、軽く体を動かすだけで、頭痛が増強します。発作中には、感覚が過敏になって、音がうるさく感じたり、異臭を感じたりする方がいらっしゃいます。

偏頭痛の患者さんが、前兆を自覚されている時には、脳の循環血液量が低下し、頭痛がおこってくると、循環血液量が上昇すると言う報告があります。何らかの、血管に作用する物質が関与している訳ですが、現在では、セロトニン、CGRP、サブスタンスPというホルモンの関与が、最も有力であるとされています。何らかの理由で、これらの物質が大量放出された時に、頭のごく細い血管が収縮して、それに続く拡張によって三叉神経が刺激されて頭痛が生じるとされています。
では、治療はどうしたら良いでしょうか?

市販薬を含め、鎮痛剤が広く用いられています。最近では、前出しましたトリプタン製剤が発売され、注目されています。これまでの薬剤と違い、トリプタン製剤は、頭痛の程度が強くなってからでも、比較的早期に症状をとることが出来ます。しかし、血管を収縮させる薬ですので、虚血性心疾患や脳血管障害のある患者さんには投与できないことと、極一部の片頭痛に対しては、全く効果がないことがあるという、問題点もあります。

治療の第1段階は、きちんと、片頭痛と言う診断をつけることですので、脳神経外科への受診をお薦めいたします。

緊張型頭痛

簡単にいうと、肩こり頭痛です。細かい作業をしたり、一日中同じ姿勢で仕事をしていたり、長い時間コンピューター画面を見ている方に多いようです。この病態も、さらに詳しく分類されるのですが、詳しいことを知るよりは、筋肉性の頭痛なのかどうかを自己診断されることが大切です。

この頭痛は、持続性の痛みですが、寝込んでしまうほどひどい痛みではありません。数時間単位のものから、一週間以上続くものまでありますが、比較的、持続時間が長いのが特徴です。痛みのパターンとしては、「圧迫される感じ」「しめつけられる感じ」であり、否拍動性の持続痛です。多くは両側性で、後頚部から後頭部の痛みが多いようです。背中まで痛むこともあります。マッサージや入浴、なかには、飲酒で、一時的に良くなることもありますが、再度症状が出てきます。このパターンの頭痛をお持ちの患者さんには、社会的なストレスや、不安、うつを持っていらっしゃる方が見受けられます。また、痛み止めを長い間飲んでいらっしゃるために、薬剤誘発性頭痛に移行してしまっている方もいらっしゃいます。

根本的な治療は、筋肉の張りをとることですので、運動やリハビリテーションによって、筋肉内の乳酸を代謝させることです。しかし、痛みのある時に、運動もしんどいので、サポート的に、湿布や、内服薬を使用することをお薦めします。緊張性頭痛には、鎮痛剤や筋弛緩薬の内服や、抗炎症作用のある湿布薬が有効です。しかし、鎮痛剤は、服用回数が多くなってしまうと、逆に薬剤誘発性頭痛を作ってしまいますので、服用方法に関しての知識が必要です。

また、ストレスや不安、うつが隠れていると、常に、緊張状態になってしまいますので、軽い自律神経安定剤や精神安定剤の併用が、非常に有効なことがあります。きちんと、緊張型頭痛と言う診断をつけた上で、こういった薬を併用することが有効ですので、一度、脳神経外科への受診してみてください。

群発頭痛

この頭痛は、眼の周囲から前頭部、側頭部にかけての非常に激しい痛みが、数週から数ヶ月の期間に群発するのが特徴です。一回の頭痛は、15分から3時間続き、1日2〜8回の頻度でおこります。痛みは、夜間や睡眠中におこりやすく、頭痛が生じている時には、眼が充血し、涙が出たりします。また、瞳孔が小さくなったり、汗が出なくなったりといった自律神経の症状が出たりします。群発頭痛の発生率は、10万人に対して10人程度と、非常に少ないのですが、症状が強く、20〜30歳代に多く発症するため、仕事の妨げとなりますので、早めに診断をつけて治療することをお薦めいたしております。

群発頭痛にも、トリプタン製剤が有効とされていますが、一般的な頭痛薬や、ステロイド剤が有効なこともあります。酸素吸入が有効なこともあります。やはり、確実な診断をつけてからの治療が必要ですので、一度、脳神経外科への受診してみてください。

まとめ

これまで、頭痛症の治療は、一般的な鎮痛剤を投与すれば充分と考えられてきました。欧米では、慢性頭痛患者さんのQOLの改善と、頭痛発作による生産性低下の社会的性対策の重要性が広く認知されています。本邦でも、近年の社会不安から、心療内科的な観点と、脳神経外科的な観点から頭痛症の治療が見直される様になりました。特に、近年、トリプタン製剤が次々に認可されており、慢性頭痛に対する治療がますますクローズアップされることになると思います。適切な診断をつけて、ご自身のQOLの改善を図る一手段として、頭痛を放置しないことをお薦めいたします。

【顔面の痛み 三叉神経痛】

かき氷を食べていて、眉間のあたりにツーンと痛みを感じたことがありませんか?
これは、舌咽神経の過剰刺激による『アイスクリーム頭痛』と言われます。一方、きわめて一般的な頭痛は、三叉神経が、何らかの原因で刺激を受けて生じるものです。

一般的な頭痛とは違って、顔面の一部分が、局所的に、非常に強く痛む病気があります。痛みは、突発的に起こり、激痛もしくは電撃痛です。(キリでえぐられるような痛みと言われます。)患者さんの多くは、痛みのために顔を覆い、しばらくお話が出来なくなるほどの痛みです。しかし、この痛みは、数秒、もしくは数十秒後には嘘の様に消失してしまいます。この病気を『三叉神経痛』と言います。

痛みの原因は、頭の中で三叉神経そのものに動脈があたって、神経に直接刺激を与えることで生じるのです。つまり、神経そのものの痛みです。(例えると、虫歯の痛みの強いものと考えてください。)この痛みは、食事、歯磨き、洗顔、ひげ剃りなどで誘発されるために、痛みに対する恐怖心のために、食事が出来なくなったり、歯を磨けなくなったりします。ひどい場合には、水分も取れなくなって、脱水症状になってしまいます。口の中が痛む方では、診断がつかずに、歯科で何本も抜歯を繰り返された方もいらっしゃいます。 三叉神経痛自体は、命に関係する病気ではありませんが、患者さんの苦痛は大きく、痛みが強くなると、食事が取れなくなってしまいますので、痛みのコントロールが必要です。三叉神経痛に対する治療は、最終的には、手術しかありません。しかし、一時的には、薬(普通の鎮痛薬は効きません)で痛みをコントロールすることも可能ですし、ペインクリニックでブロック治療を選択することも可能です。また、最近では、ガンマナイフやサイバーナイフを使った先端技術を使って、定位放射線治療も行われています。

いずれの治療を選択するとしても、まず、きちんと診断をつけて、症状の強さと年齢などを考慮して、治療法を充分に理解した上で、選択すべきです。個人的には、全身状態が許すのであれば、手術をお薦めしています。ただし、手術には、全身麻酔が必要ですし、入院期間は十日前後を要します。手術をするとしても、三叉神経痛の手術に熟達した病院での手術をお薦めいたします。お悩みの方は、まず、脳神経外科を受診してみてください。

【薬剤乱用頭痛に関して】

頭痛に対して鎮痛剤、つまり痛み止めといわれる類のお薬を、月に10錠以上飲まれていらっしゃる方は読んでみて下さい。頭痛の原因となる明らかな原因(出血や腫瘍)が認められず、繰り返し頭が痛くなる状態を、『慢性一時性頭痛』と言います。この中には、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛などがあります。1990年代に、トリプタン系薬剤という片頭痛によく効く薬が開発されてから、これらの頭痛症候群は、治療可能な疾患であるという認識が高まってきました。(それまでは、分けもわからず痛み止めをとっかえひっかえ投与していたといって良いかもしれません。)しかし一方で、そういった痛み止めの使い過ぎから、薬によって誘発される頭痛の報告が見られる様になってきました。 わかりやすく解説してみます。

何年も頭痛で苦しんできた方が、ある病院で片頭痛と診断され、トリプタンというお薬を処方されたとします。『これまでの薬と違って、このお薬は、とても良く効きますよ』という医者の言葉を半信半疑で聞いて持ち帰った患者さんが、頭痛発作が生じた時にこのお薬を内服すると、まるで魔法の様に、30分ほどで痛みが消えてしまいました。長い間、頭痛に苦しんできた方には、まさしく、魔法のお薬です。それからというもの、痛みが生じる度に、このお薬を飲む様になりました。はじめは月に4錠ほどであったものが、次第に数が増えて、月に20錠以上飲まれる様になりました。お薬の効果は一時的にはあるものの、頭痛は毎日の様に起こる様になり、内服間隔は短くなってきます。このような状態を、薬剤乱用頭痛といいます。(ただし、トリプタンはあくまで例であって、市販の鎮痛薬でも同じことが起こりますので、ご注意ください。)

ここで、薬剤乱用頭痛の特徴を記載しておきます。痛みは両側性で、圧迫感や締め付け感が混在していて、寝込むほどではありませんが、我慢できない痛みです。多くは、拍動性ではない様です。さらに、薬を服用する前の頭痛と、痛みの感じが変わっていると言われる方が多いようです。どうして、このようなことが起こってしまったのでしょうか?

まず、頭痛の基本的な事をお話します。頭痛には、いろいろな原因があります。頭痛を治療する際には、どこに原因がありかを考えないといけません。これは、お薬を内服される患者さんにも同じ事が言えるのです。
頭の中に頭痛の原因となる出血や腫瘍がない慢性一時性頭痛に限定して、解説します。

頭痛の原因には、大きく分けて、
1, 筋肉性の頭痛
2, 血管性の頭痛
3, 炎症性の頭痛
4,自律神経性の頭痛
があります。(かなりおおざっぱな分類です)各々の代表例が、筋緊張性頭痛=肩こり頭痛、片頭痛、副鼻腔炎などの耳鼻科疾患からの頭痛、不眠や胃腸障害を伴ううつ症候群の関連頭痛などです。この各々の頭痛に、効果のある薬は異なるのです。前出のトリプタンという薬は、血管性の頭痛にだけ効果があります。しかし、ある意味、魔法のお薬ですから、頭痛→トリプタンという考えを持ってしまう事に問題があるのです。

頭痛で苦しんでいらっしゃる患者さんの多くは、上記のような頭痛を重複して持ってらっしゃる事が多く、私たちは混合性頭痛と診断します。当然、治療は、混合している頭痛を整理整頓して、効果のある薬を使ってもらう事から始めるのですが、この整理整頓が難しいのです。

少し、わかりやすい表現に変えてみましょう。混合性頭痛というのは、1〜4の頭痛が、こんがらがっている状態です。つまり、このこんがらがっている糸を、ほぐしてバラバラにしていく作業が治療の第一歩なのです。教科書的には、『原因になっている薬の内服を中止すれば、2ヶ月以内に、連日生じる痛みは消失して、以前のパターンに戻る。』と書かれていますが、患者さんの多くは、この2ヶ月間を我慢できません。さらに、教科書には、『徐々に減らすよりも、原因薬剤を直ちに中止する方が良好な結果が得られる。』とも書かれていますが、そう簡単に解決しないのが、この頭痛の状態なのです。

そこで当院では、まず、肩こり頭痛や自律神経に悪影響を出す不眠状態などを改善していきます。すると、血管性の頭痛である片頭痛が浮き彫りになってくるのです。(この状態を、患者さん自身が自覚できるようにならないと治療になりません。)この浮き彫りになった片頭痛に対して、トリプタンという薬を使うと、かなり内服薬の数を減らす事ができる様になります。実際の診療においては、こんなに単純にはいきませんので、この良好な状態になるまでに、数ヶ月を要する事もあります。 つまり、以上のような事を、医者も、患者さんも、充分に理解した上で治療に携わらなければ、本当の意味での頭痛のコントロールはできないのです。

言い換えると、こういう事を患者さんに充分に説明しないで、魔法の薬を投与してしまうと、薬剤乱用頭痛を作ってしまうことになるのです。つまり、頭痛の治療には、治療開始時点で、おおむね30分近くの診療時間を必要とするのです。もしもあなたが、頭痛のお薬を、一月に10錠以上飲んでいる場合には、薬剤誘発性頭痛になっている可能性があります。一度、脳神経外科を受診してみて下さい。